肝臓は極めて多様な機能を営む臓器であり、現在の科学技術をもってしても、人の命を支えうる人工肝臓を作ることはできません。従って、末期肝不全に陥った患者さんを救う方法は、今のところ肝臓移植(肝移植)しかありません。
「臓器移植に関する法律」の施行後、本邦では2009年11月24日までに64例の脳死肝移植が実行されています。脳死肝移植実施施設は大阪大学、岡山大学、九州大学、京都大学、慶應義塾大学、信州大学、東京大学、東北大学、長崎大学、名古屋大学、新潟大学、広島大学、北海道大学の13施設です。(五十音順)
我が国では1989年より、血縁者、配偶者等が自分の肝臓の一部を提供する生体部分肝移植が行われています。脳死肝移植が開始された後もその数が少ないため、生体肝移植の症例数は年々増加しています。脳死肝移植が数多く行われている欧米では、生体部分肝移植はあまり行われませんでしたが、近年のドナー不足から症例数が増えています。しかし、国の内外で生体肝ドナーの死亡があり、生体肝移植という医療のあり方について見直しの機運があります。
適応
進行性の肝疾患のため、末期状態にあり従来の治療方法では余命1年以内と推定されるもの。ただし、先天性肝・胆道疾患、先天性代謝異常症等の場合は必ずしも余命1年にこだわりません。
具体的には以下の疾患が移植なります。
(ア)劇症肝炎
(イ)先天性肝・胆道疾患
(ウ)先天性代謝異常症
(エ)Budd-Chiari症候群
(オ)原発性胆汁性肝硬変症
(カ)原発性硬化性肝管炎
(キ)肝硬変(肝炎ウイルス性、二次性胆汁性、アルコール性、その他)
(ク)肝細胞癌(遠隔転移と肝血管内浸潤を認めないもので。径5cm1個又は径3cm3個以内のもの)
(ケ)肝移植の他に治療法のない全ての疾患
年齢制限:おおむね60歳代までが望ましいとされています。
移植待機者数
2009年11月2日の時点で、269人が脳死肝移植を希望して待機中です。
待機中の死亡者数
先に述べたように、肝移植が必要な患者さんは概ね余命が1年以内であり、待機期間が長期にわたると、残念ながら死亡してしまいます。
下記の表から推定しますと、年間約2,000人近くの方々が、肝移植の適応がありながら受けることが出来ずに亡くなっていると推定されます。
過去に脳死肝移植を希望して日本臓器移植ネットワークに登録した方のうち、2009年11月2日の時点で既に357人が死亡しています。その他では、25人が海外に渡航して肝移植を受け、134人が生体肝移植を受けています。その他では19人が海外に渡航して肝移植を受け、115人が生体肝移植を受けています。トータルでみると、脳死肝移植を希望して登録した人のうち、実際に本邦で脳死肝移植を受けることが出来た人は7%に過ぎないのが現状です。
肝移植適応患者数の概算(年間)
| 疾患 | 年間発症者数 | 移植適応者数 |
| 胆道閉鎖症 | 140 | 100 |
| 原発性胆汁性肝硬変症 | 500 | 25 |
| 劇症肝炎 | 1,000 | 100 |
| 肝硬変 | 20,000 | 1,000 |
| 合計 | 約41,500 | 約2,200 |
※市田文弘・谷川久一編「肝移植適応基準」1991より一部改変
移植成績
国内で脳死肝移植を受けた63名の方々のうち、48名が生存しています。累積生存率は1年81%、3年79%、5年76%、10年72%です。一方、生体肝移植後の累積生存率は、1年83%、3年79%、5年77%、10年73%、15年68%です。
肝移植後の世界最長生存例は38年です。