| C肺:日本国内での年間移植件数 |
| 西暦年 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 |
| 脳死移植 | 0 | 0 | 3 | 6 | 4 | 9 | 11 | 4 | 8 |
| 生体移植 | 1 | 0 | 4 | 8 | 12 | 2 | 4 | 5 | 6 |
肺は左右の胸の中に一対存在する臓器で、主として空気中から酸素を血液内に取り入れ、血液中の炭酸ガスを空気中に排泄するという仕事をしています。
肺の機能が低下すると血液中の酸素の量が減少し、さらに悪化すると炭酸ガスの量が増加してきます。
血液中の酸素の量が減少すると最初は運動時の息切れを強く感じるようになり、やがては静かにしていても呼吸困難を覚えるようになります。これを呼吸不全と呼びます。
血液中の炭酸ガスの量が増加すると、血液は酸性に傾いてゆき、腎臓などでの代償機能を超えてると体内のpHのバランスが破綻して生命維持が困難になります。
酸素の不足に対しては酸素の吸入である程度対処できますが、肺の機能が廃絶すると酸素を投与してももはや生命の維持が出来なくなります。
肺に原因する病気のために陥る呼吸不全に対して、片方あるいは両方の肺を交換する治療が肺移植です。
肺移植には脳死肺移植と生体肺移植の二つの方法があります。
脳死下で提供された肺を移植するのが脳死肺移植で、両肺が提供された場合は片方ずつ二人の患者さんに移植する方法と、両肺を一人の患者さんに移植する方法があります。どちらの方法をとるかは移植される患者さんの病気によって決まります。
生体肺移植は主として二人の親近者からそれぞれ肺の一部を提供して頂き患者さんに移植する方法です(小さな子供の場合、提供者が一人という事例もこれまでに散見されます)。
生体肺移植では提供される肺の量が少ないために、患者さんと提供者の体格の違いなどの問題から、これを行える場合はかなり限定されます。
適応
両肺全体に広がる病気で進行性であり有効な治療法のない病気が対象となります。具体的には肺・心肺移植関連学会協議会の定めた以下の17の疾患が対象とされています。
・原発性肺高血圧症・好酸球性肉芽腫
・特発性肺線維症・びまん性汎細気管支炎(DPB)
・肺気腫・アイゼンメンジャー症候群
・気管支拡張症・慢性血栓塞栓症性肺高血圧
・肺サルコイドーシス・多発性肺動静脈瘻
・肺リンパ脈管筋腫症・α−1アンチトリプシン欠損型肺気腫
・その他の間質性肺炎・嚢胞性腺維症(cystic fibrosis)
・閉塞性細気管支炎(BO)・
・じん肺
・その他、肺・心肺移植関連学会協議会で承認する進行性肺疾患
年齢は原則として両肺移植では55歳以下、片肺移植では60歳以下であること。このほかに肺・心肺移植関連学会協議会の定めた「一般的適応指針」を満たしていること、そして「除外条件」を有していないことが必要とされています。
移植待機者数
・日本臓器移植ネットワークへの登録作業を開始した1998年8月から2008年12月までの10年4ヶ月間で合計356人が登録をされました。移植を受けた方、亡くなった方を除いて2008年12月
現在で120人の方が肺移植のための待機中であり、グラフのごとくその数は直線的に増加しています。
待機中の死亡者数
これまでの10年4ヶ月の登録期間中に
登録された356人のうち、すでに155人(43.5%)が待機中に死亡しています。
脳死下での臓器提供の数が
現状では非常に少なく、待機患者さんの待機日数も増加する一方です。この期間中に移植を受けることが出来た人が80人(22.5%)(待機中に生体肺移植に変えた方も含みます)であるのに比して、
その2倍以上の人が亡くなっていることになります。
移植成績
129人のうち、これまで26人が移植後の合併症で死亡しています。このうち、移植早期死亡(30日以内の死亡)は9例でした。
2008年12月の時点での我が国の成績は1年生存が81.4%、5年生存が66.2%です。
生体肺移植では1年生存が90.5%、5年生存が81.1%となっています。
欧米での肺移植の成績を中心とする国際心臓・肺移植学会の2006年の報告(1年生存77.3%、5年生存49.2%)を大きく上回るものになっています。
肺移植のために待機している患者さんの生命予後が1年生存62.3%、5年生存26.9%ですので、
肺移植が患者さんの生命予後を改善していることが分かります。
その他
国際登録における肺移植の成績は、心移植や腎移植などに比べて低いのですが、その理由としては、肺が常に外気を中に入れる臓器であるために感染の機会が大きいことがあげられます。しかし、そのような合併症を起こさずに経過すると片肺のみの移植でも十分に社会生活の営みに復帰することが可能です。これまで肺移植を受けた人の中には、成長期の子供を持つ家庭の大黒柱となっている年代の人も多くいます。
また、我が国で肺移植を受けた方の多くが家庭生活そして職場へと社会復帰を遂げており、治療手段としての肺移植の有効性が示されたといえます。